【実例⑥】関節リウマチ

[基礎データ] 病名:関節リウマチ、慢性心不全に誤嚥性肺炎を合併
患者:70代 女性 Kさん
入院までの経過
 Kさんの関節リウマチ(→①)の病歴は30年以上。両手、両趾、膝、肩、股関節など、ほとんどの関節が変形しており、しかも筋力も著しく低下。杖歩行がやっとできる程度で、日常生活の動作は介助をかなり必要とします。また、頚椎の変形、いわゆる〝首のリウマチ〟もあるため、日中は首の前屈など運動を制限するカラーを首に付けておく必要もあります。そうした状況下、誤嚥性肺炎を起こし、心不全も合併したため、当院へ約1ヵ月間の入院となりました。
療養型入院での治療
 入院当初は、誤嚥性肺炎に心不全も合併したため、絶食、酸素吸入、輸液療法を必要とし、ベッド上での安静を強いられました。その結果、どうしても避けられなかったのが筋力低下です。
  病状の安定化を待って、ようやくリハビリを開始。まず、ベッド上で出来るリハビリから始め、徐々に座位訓練へと移行。血圧の変動もみられたため、心肺機能にも注意を払いながら、リハビリを進めていきました。頚椎の病変からの影響に配慮して嚥下機能を評価したところ、食事を摂る姿勢と食事の形態に注意が必要という結果が出されるなど、介護の課題はますます多岐にわたりました。
  その一方、継続して行っていたリハビリの効果は四肢の筋力向上など随所に鮮明に現れ、在宅療養の希望が出てきました。療養型入院により、リウマチを抱えて自宅療養していた時には〝おざなり〟になっていた四肢の筋力向上や嚥下機能などが改善されたことは、不幸中の幸いとも言うべきことでもありました。
自宅での療養生活へ
 退院へのメドが立ち始めた頃合いを見計らって、ケアマネジャー、リハビリスタッフ、看護師、管理栄養士等でKさん宅に退院前訪問を行いました。検討したのは、ベッドの状態、ポータブルトイレをはじめ、屋内・屋外の出入りの際の昇降機の取り付け。自宅療養の受け皿となる昇降機設置後は、何度も自宅で練習を重ね、本人とご家族の自信がついたところで、自宅への退院としました。その後、デイサービス、訪問看護、訪問診療、ショートステイなど利用しながら、快適な自宅での生活を送られています。

①関節リウマチ

身体のあちこちの関節に炎症が起こり、関節が腫(は)れて痛む病気です。進行すると関節の変形や機能障害が起こります。30歳以上の人口の1%にあたる人がこの病気にかかるといわれ、30歳代から50歳代で発病する人が多く、女性は男性の実に約3倍の比率で多くかかります。
 その原因は完全にわかっているわけではありませんが、免疫系(細菌などから体を防御するシステム)に異常があることはよく知られています。