摂食・嚥下への取り組み
病棟ADL(日常生活動作)の獲得

食べることは人生の喜びの一つであり、おいしく食べることは元気に生活するための基本です。
当院では「摂食嚥下機能障害」(→①)の克服に向けて、医師、看護師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、放射線技師、歯科衛生士がチームを組み、安全に口から食事をとることができるよう評価し、患者さま一人ひとりに合った嚥下訓練を実施しています。口から食べる可能性がある方には、できる限り口から食べる楽しみを感じていただけるよう、嚥下調整食(→②)などにも様々な工夫を取り入れています。

検査と診断

摂食嚥下機能障害は、外観からはわかりにくく、また症状もさまざまです。
当院では、医師、看護師、管理栄養士、リハビリスタッフ、ご家族の立ち会いのもと、「嚥下造影検査」を積極的に行っており、その結果に基づいて、個々の状態に応じた摂食・嚥下訓練を実施しています。
このほか、自力摂取を重視し、口腔ケアにも取り組んでいます。

■嚥下造影検査
嚥下造影検査とは、バリウムを混ぜて作った種々の形態の食物をその方の状態に合わせて食べていただきながら、X線で撮影し、嚥下状態を見る検査です。
映像はDVDに残し、後々の経過を評価する比較資料にします。

食事の内容や形態
多職種参加の摂食嚥下委員会チームが情報を共有し、患者さまの嚥下機能回復につながるよう、個別の食事形態、嚥下訓練内容、口腔ケア等の内容を検討し、組み立てます。
入院生活の食事では、摂食嚥下機能障害に合わせて、嚥下調整食をご用意します。嚥下造影検査でその詳細を確認し、スタッフ全員で情報共有、食事の際の姿勢、背もたれの角度などケア対策を統一します。嚥下訓練にて機能が向上してきたら、段階的に食事形態をアップしていきます。

    ①摂食嚥下機能障害

  • 食べること、ものを飲み込むことが難しくなる障害を「摂食嚥下障害」と言い、脳卒中の後遺症や神経難病、認知症、加齢などが原因で起こります。
    食べ物や飲み物が間違って気管に入り、窒息や肺炎を引き起こすケースも心配されます。

    ②嚥下調整食

  • 当院では、摂食嚥下機能障害を持つ入院患者さまに、嚥下調整食を提供しています。経管栄養主体の状況から、経管栄養併用、口からの摂取比率を高めていく段階まで、患者さまの障害レベルに合わせて、段階的に進めていきます。
    開始食では、喉を通りやすいゼリー主体。次に主菜をゼラチンで固めたものなどをプラスしていきます。続いて、「嚥下調整食(ソフト食)」へ切り替えます。嚥下調整食とは、口の中で咀嚼(そしゃく)しやすく、舌で押しつぶせる程度のやわらかさでまとまった形状となり、飲み込みやすい食形態です。また、トロミを付けた汁物も加えます。さらに、移行食では、ほぐした程度の軟菜食なども加えていきます。
    そうして段階的に進めていく間、経管栄養あるいは中心静脈栄養を併用することになります、経口で充分な栄養がとれるようになれば、経口食のみとします。