【実例⑪】両側慢性硬膜下血腫

症状の回復をじっくり待ってから、
リハビリを積極的に実施すると…
超高齢に関係なく、見違えるほど回復。

[基礎データ]病名:両側慢性硬膜下血腫 患者:100代 男性 Kさん

事前経過

 Kさんは当時100歳。ご高齢ながら、老人車を使っての屋外歩行も可能なくらい、まだまだお元気。通所介護、ショートステイを利用しながらも長男夫婦と同居し、穏やかな在宅生活を送っていました。
 ところが、ある頃からご自宅で転倒を繰り返すようになり、一度医師に見てもらったらと当院へ入院し精査を行ったところ、頭部CT検査で両側の顕著な硬膜下血腫の所見が認められたのです。当初は急性期病院の脳外科へ紹介しての手術療法を検討しましたが、超ご高齢なことを配慮し、手術で血腫を除去しない保存療法にて経過をみることになりました。

当院での治療

 入院当初は不穏な症状がたびたび出現し、日常生活動作はすべて介助が必要な状態。
そんな中、Kさん本来の前向きな性格は影をひそめ、リハビリに対しても意欲がない状態が続いていました。
 ところが、入院して約2ヶ月経過した頃から、CT検査で硬膜下血腫の吸収がみられるようになりました。それに合わせて、不穏症状も消失。全身の病状が快方に向かうようになったのです。そこで、ベッドから離れてのリハビリ訓練を積極的に行ったところ、四肢の運動機能が徐々に回復。やがて自助具を用いての食事動作もできるようになり、本来の負けず嫌いの性格が復活したのか、「入れ歯を直して、もう少し形のあるご飯が食べたい」などの意見も聞かれるようになりました。さらに車いす駆動の練習も行い、軽い介助があれば自走ができるようにもなったのです。
 入院より約6ヶ月後に迎えた101歳のお誕生日。ご家族から「長生きしてくれてありがとう」の感謝のことばをかけられると、涙ぐみながら「101歳、まだまだ頑張ります」とこたえられていた姿を見て、日々経過を見守ってきた私たちスタッフも思わず頬がゆるみました。

考察

 超高齢という年齢だけで回復をあきらめるのではなく、その人の身体機能と病状の経過をみてリハビリを行う事の大切さを学びました。

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