【実例⑰】左小脳梗塞

食事摂取が3回とも経口に!
きめ細かな嚥下機能向上からスタートした在宅復帰への道のり。

[基礎データ]病名:左小脳梗塞、脱水症 患者:80代 女性 Qさん

事前経過

 Qさんは元々、心房細動、腰痛、下肢痛などで、近医へ通院していましたが、ある日、めまい症状の出現とともに、体動困難、意識レベル低下をきたし、急性期病院へ搬送されました。左小脳梗塞、高ナトリウム血症と診断され、治療を受けて意識レベルは回復したものの、右半身麻痺、経口摂取困難にて輸液管理に。引き続いての入院治療を要するため、当院へ転院となりました。

当院での治療

 入院時から簡単な意思疎通は可能。まずは栄養状態を改善するため、Qさん本人とご家族の意思を確認の上、経鼻経管栄養を開始。日を経るごとに活気が出てきたので、次に経口摂取を目指して嚥下造影検査(VF)を行いました。経口摂取へと移行させるためには、定期的なVF検査ときめ細なソフト食のレベルアップが欠かせません。
 1ヶ月毎にVF検査を行い、食事の姿勢(座位の角度)、食事の形態、水分のトロミをその都度調整しながら、嚥下訓練を継続しました。 こうして3食とも経口摂取できるようになり、経管栄養からは離脱、出汁にトロミをつけて好物のうどんも食べられるようになりました。そして車いすでの自宅退院が検討されました。
 カンファレンスでは、心臓病をもつ夫との老夫婦二人の生活であることに配慮し、宿泊・通所・訪問を組み合わせて利用できる小規模多機能型居宅介護の利用が適切と判断。夫の体調も考え、週2~3日自宅でともに暮らし、あとは小規模多機能型居宅介護での生活を送ることとなったのです。

考察

 リハビリを開始し、患者の意欲がでたため、予想以上に嚥下機能が向上し食事が3回とも経口でとれるようになった良い症例。また、適切な介護サービスを利用することにより、夫婦二人の生活を支援することにもつなっがた結果も含め、今後に向けて学ぶべきことの多い症例と思われます。

目次